日本語と英語の違い:時制のこと(”テイル”の守備範囲とbe + ing形の奥行きの話)

英語学習法

「文法そのものに意味がある。」

これが、今回の記事でお伝えしたいことです。

はじめに

The bus is stopping.

バスは今、一体どんな状態でしょうか?停車していますか?走っていますか?

この記事の最後で答え合わせをしますので、まずはここで自分の中の答えを考えてみてください。

「~している」= is/am/are + ingではない

「英語を勉強している」に文脈を補って、「~~~~~~英語を勉強している」という文を何パターンか作ってみてください。その「勉強している」は、どんな状況を表しますか?「時間の幅」という観点で整理してみてください。

例えば

  • タロちゃんは今、自室で英語を勉強している
  • タロちゃんは今朝起きてから何時間もずっと英語を勉強している
  • タロちゃんは学校で週に5日英語を勉強している

はそれぞれ、英語では

  • Taro is studying English in his room.(現在進行形)
  • Taro has been studying English for hours since he got up this morning.(現在完了進行形)
  • Taro studies English at school five days a week.(単純現在形)

となります。

日本語に訳すとどれも同じ「英語を勉強している」ですが、詳しい状況に応じて、英語では異なる形式(文法)が選択されていますね。

Taro is studying English in his room.(現在進行形)という文は、タロちゃんの英語学習が今まさにこの瞬間、机に向かう形で行われていることを描写します。

Taro has been studying English for hours since he got up this morning.(現在完了進行形)という文は、英語学習という行為が連続的に、途切れることなく数時間続いていることを表しています。

Taro studies English at school five days a week.(単純現在形)という文は、日常的な習慣として、「日常」という長いスパンの中で定期的に英語学習というイベントが発生するんだというメッセージを伝えています。

このように、study Englishというイベントがどんな時間を幅をもって生じるものなのか、study Englishというイベントのどの場面を切り取りたいのかによって、英語の文法は柔軟に選択されねばなりません。

学校の英文法の授業を思い出して、「~しています」という日本語に当てはまるものはなんでもbe Vingの形にしてしまいたくなる人もいると思います。ですが、実際には、「~している」という日本語の形式がいつでも英語のbe Vingの形式に対応するわけではないのです。

英語の進行形(be + ing)の意味

進行形の核にあるのは「未完了」と「一時性」と覚えてください。

未完了

「ある動作が始まって、それが完了のフェーズに向かっている途中」という状況を切り取るのが進行形です。典型的な現在進行形の文 I am eating dinner now.(今晩ごはん食べてるところだよ)といった文を考えてみましょう。これは、「いただきます」から「ごちそうさま」までの一通りのeat dinnerという行為が「まだ終わっていない」ことを示しています。「Vしている最中だ」という表現は、その動詞Vが指す行為が未完了の状態であることを意味します。

変化の途中(~しつつある)

この「未完了」の意味を少し拡張すると、「be + Ving」= 「Vしかけている、Vしつつある」の用法が見えてきます。

I’m wrapping up work. 「仕事を終えようとしている

Snow leopards are going extinct. 「ユキヒョウは絶滅しかけている

上の2文における進行形は、wrap up work(仕事を片付ける)が完了に向かいつつある、go extinct(絶滅する)が完了状態に向かっている途中である、という「変化の過渡期」を表します。

起こりかけている出来事(近接未来)

「未完了」の意味を「行為が始まる時(”未完了状態”に突入するとき)」にフォーカスしながら拡張してみましょう。すると、「もう間もなくVする」という近接未来の意味が見えてきます。

I’m leaving for Germany tomorrow morning. 「明日の朝、ドイツに発つ」

It’s summer break, and my cousins are visiting me soon. 「夏休みで、もうすぐいとこがやってくるんだ」

「出発する」「訪問する」という行為は実際にはまだ始まっていないわけですが、「気持ちの上ではもう始まっている」というイメージで、近い将来起こる出来事についても進行形で表現することができます。

一時性

「一時的な状態」を表すことができるのも、進行形の特徴です。これは、日常的に繰り返される習慣などを表す「単純現在形」がもつ「恒常性」と比較すると分かりやすいです。

I live in Osaka. 「大阪に住んでます」

I’m living with my grandma now because she got injured last month and needs some help. 「先月おばあちゃんがケガをして助けが必要な状態なので、私は今おばあちゃんと暮らしてるんです」

同じ動詞liveでも、文脈によって「単純現在形」か「現在進行形」かを選択することができます。あまり日々の変化がない出来事・毎日変わらず行われることは、現在形で表現します。通常、liveは「昨日も今日も明日も変わらない、不変的(恒常的)なイベント」を表すと言えます(帰る場所が毎日のように変わる人はあまりいませんよね)。文法書でよく「liveは進行形ではあまり使わないよ」と書かれる所以はここにあります。

しかし、特別な文脈が用意されて、「一時的にそうなっているんだ」と説明する場合には、上記の例のようにliveを現在進行形で使うこともできるのです。

他の例としては、次のような会話が考えられます。

Mother: You are studying so hard today. 「(なんだかいつもと違って=一時的に)今日は熱心に勉強してるんやな」

Daughter: I have an important exam tomorrow. 「だって明日大事なテストがあるんやもん」

おわりに

The bus is stopping.

冒頭で提示したこの文が描写しているバスの状態、もう分かりますね。

「停車している」/「動いている」の2択であれば、バスはまだ「動いている」状態です。停車しようとして、減速しながらもまだゆっくりと車輪が回転しているような状態でしょう。「英語の is/am/are + ingは “~している” だ!」と覚えている人は、はじめ、「バスは止まっている」→「停車してるんだ!」と思ったかもしれません。ですが、これを正しく日本語に訳すなら、「バスは停車しつつある/停車しようとしている/停車しかけている」といったところになります。

今回は日本語の「テイル」とそれに対応する英語表現を取り上げ、そこから英語の進行形の意味を掘り下げてみました。文の意味を作るのは単語だけではないのだということ、「文法そのもの」が意味を持つのだということを実感して頂けたでしょうか。「ている」=「be Ving」ではないということ、文法は生きた言語のしなやかさを反映するものだということを感じて、文法学習の奥深さを楽しんでいただけたなら幸いです。

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