※この記事は高校卒業~大学レベルの英語ライティングの力について書いたものです。英検2級以下、中学・高校レベルのライティングについてはまた日を改めて執筆します※
英語のエッセイを書くに押さえておくべき「構成のルール」について、英検準1級の過去問を題材に解説してみようと思います。
この記事を読んで理解して欲しいポイントは次の通り。
- 全体を「トップ・ダウンの流れ(全体像をざっくり提示→より細かな描写・補足という流れ)」にするために、下記を実現すること
- 導入→本論→結論の各パートの役割を知ったうえで全体の構成を考えること(その結果、全体の情報構造をトップ・ダウンの流れにすること)
- thesis statementを作ること
- topic sentenceとsupporting sentencesの役割を理解すること
例題
Write an essay on the given topic.
Use two of the points below to support your answer.
Structure: introduction, main body, and conclusion
Suggested length: 120-150 words
TOPIC: Should businesses provide more online services? (2023年度第1回)
POINTS:CONVENIENCE / COST / JOBS / THE ENVIRONMENT
ひよっこライティング
次のサンプル・エッセイの「まだまだヒヨッコやなぁ」と思うところはどこですか?ツッコミどころを探してみましょう。
I think that businesses should provide more online services. I have two reasons to support my opinion.
First, many users like to use services without worrying about time and place. People today prefer to have his/her own lifestyles, so offering them flexible services in respect of time and place is important.
Second, online services cut costs for running a business. For instance, if you are a teacher and choose to teach online instead of teaching in person, you do not have to rent a room or purchase desks and chairs.
For the above-mentioned reasons, I believe that businesses should provide more online services.
(103 words)
introduction, conclusionの役割を分かっていない→書くべきことが分からず、全体の語数不足に
ひよっこライティングでは、「introduction(導入)」と「conclusion(結論)」を作れていません。何となく段落分けをしてそれらしいことを書こうとはしていますが、それぞれの段落が果たすべき役割を十分に果たせていない状況です。introduction, conclusionを作り直すことで、「全体の語数が120語に達していない」という問題は解決できそうです。
introductionとは?
ひよっこエッセイでは、英検2級レベルまでであれば認められそうな「決まり文句」的な2文が段落を構成しています。ですが、イントロは「この決まり文句を書いておけばいい」というものではありません。
introductionの役割は、「そのエッセイがおよそ何について主張するのかという全体像を、文章の冒頭で読者に提示すること」です。「事業はオンラインのサービスをもっと提供すべきだと思います。2つの理由があります」だけでは、その先に続く文章の展開を読者は予想することができません。どのような観点から「オンライン・サービスを活用すべき」と主張するのか、およその枠組みを示す必要があります。
読者に対して全体の見取り図を提示するために不可欠なのが、thesis statement(主題文)です。ここに、「私がこの文章で伝えたいのは要はこういうことです!」というメッセージを込めて、導入の段階で要点を読者に見せてしまうのです。
今回の英検の過去問では「4つのうち2つのPOINTSを使うこと」という指示もありますし、「〇〇と××という観点から、~~~だと思う」といった一文をthesis statementに据えておけば、どういう論拠でどのような立場の意見を論じていくのか、およその展開を読者に伝えることができます。
ちなみに、thesis statementは「introductionの最後」に作られることが多いです。語数の多い文章でイントロ自体が長くなる時も、「thesis statementはイントロの一番後ろ」に作るようにしましょう。
文章の冒頭で「要はこれが言いたい!」という結論を提示することで、英語らしいトップ・ダウンの構造(結論ファーストの伝え方)ができます。introductionを戦略的に書くことで、「全体像を提示する(一般性が高い情報)→細かな情報を後から提示して主張を強化する(具体性が高い情報)」というトップ・ダウンの構成を作りましょう。
conclusionとは?
conclusionも、ただの決まり文句を書く段落ではありません。この段落の役割は、「文章全体の主張を今一度振りかえって、何を主張したい文章だったのかを読者に再確認させること」です。本論であれこれ論じたことをざっくりと復習した上で、thesis statementで述べたような「この文章で言いたいこと」を改めて提示します。英検のエッセイ程度の短い文章であれば、全体をわざわざ振り返る実質的な必要性はないかもしれません。しかし大学で書くレポートや論文などであれば、文章全体でどんなことを論じたのかをまとめてあげることは、読者の理解を助ける上でとても重要です。
ひよっこエッセイでは「For the above-mentioned reasons(前述の理由により)」でまとめられているところも、本来であれば「どんな理由だったのか」を再度提示すべきです。その際、introductionやbodyで使った表現とは別の言い方を見つけられれば、より洗練された英文を書くことができます。同じようなメッセージを別の表現で伝えるparaphraseの技術も試されるところです。
body partのtopic sentenceをよく考えていない
main bodyの2つの段落のうち、1つ目はtopic sentenceが弱いです。「設問にしっかり応えている」というアピールをするためにも、各body paragraphのtopic sentenceのメッセージをきちんと考えることが重要です。
topic sentence(そして後続するsupporting sentences)について
トピック・センテンスは、「その段落で言いたいこと」を端的にまとめた一文です。「この段落は何の話をしている段落?」という問いに答えるのが、トピック・センテンスです。「文章全体」の主要なメッセージを込めるのはthesis statementでしたが、「段落」レベルの主要なメッセージを伝えるのはtopic sentenceということになります。
topic sentenceで「この段落の主張はこれ」という大枠を提示したら、supporting sentence(s)でその主張を補強していきましょう。supportでは、topicで述べたことをさらに詳細にかみ砕いてみたり具体事例を提示したりして、読者を納得させます。このtopic > supportの流れを守れば、main bodyの各段落の話の流れもトップ・ダウンにすることができますよ。
Body paragraph 1 の topic sentence 再考
ひよっこライティングのbody前半のtopic sentenceは”many users like to use services without worrying about time and place”のようです。これは、設問で要求されていることに対して直球で返答を返しきれていない感じがします。
今回の設問では、与えられた4つのポイントから2つを選んで論拠を作らないといけません。ひよっこエッセイの論拠1はCONVENIENCEだと思われます。であれば、「CONVENIENCEのポイントを選んだよー!」とはっきりと宣言しておく方が賢明です。
First factor that makes online services advantageous is convenience because many users like to use services without worrying about time and place. のように、明確にキーワードを提示すると良いでしょう。こうすることで、設問をよく理解してそれに応じようとしていることが確実に伝わります。
この「設問への取り組み」は、どの英語資格試験のライティングでも重視されるポイントです。エッセイの主張の「柱」を作るtopic sentenceを考える際は、そのメッセージが設問の要求に直接的な答えを返すことに成功しているかよく吟味して、段落を代表する一文としてふさわしいメッセージであることを確かめましょう。
にわとりライティング
さっきのヒヨコがニワトリに成長すると、次のようなエッセイが誕生します。どこが改善されていますか?構成の観点で考えてみましょう。
Businesses should make more online services available because of its convenience for users and cost-saving advantages for business owners, which lead to sustainable management of the business.
To begin with, online services attract many customers since it is convenient. Whatever service a customer is looking for, it is better for him/her to be able to use it regardless of time and place. In the era of diversity in people’s ways of living, flexible options offered by online services are more welcomed than before.
In addition, providing services on the Internet helps business owners cut costs. For instance, if you are a teacher and choose to offer online courses instead of face-to-face classroom teaching, you can save money for preparing physical classrooms by renting a room and purchasing desks and chairs.
To sum up, businesses can be successful and sustainable by taking advantage of online services. The Internet’s power of accessibility and cost-effectiveness will help businesses have constant number of customers with limited expenses.
(154 words)
にわとりポイント1: main bodyの主張を明確にするtopic & support
論拠を提示する2つのbody paragraphsを見てください。それぞれに明確なtopic sentenceがあり、設問への直接的な答えを示しています。
- online services attract many customers since it is convenient
- providing services on the Internet helps business owners cut costs
さらに、それぞれのtopis sentenceに続くsupport要素が、topicの主張をより詳細に説明しています。直後に具体性の高い説明が続くことで、読み手がtopic sentenceの主張に納得しやすくなります。
にわとりポイント2: main bodyの主張をまとめて予告するthesis statement
bodyで提示する2つの論拠とそこから導き出される結論が、thesis statementとしてまとめられています。
- Businesses should make more online services available because of its convenience for users and cost-saving advantages for business owners, which lead to sustainable management of the business.
「利便性」「コスト削減」という2つの論拠を提示しつつ、「事業を持続させるうえでオンライン・サービスは有用だ」という”書き手の立場・主張”を理解することができますね。
にわとりポイント3: intro -> body (-> conclusion)がトップ・ダウンの流れを作る
しっかりとしたthesis statementをもつintroductionを作ることで、文章全体の流れが「トップ・ダウン」の構成になっています。
全体像の予告と主張の明確化(introduction)→主張を裏付ける論拠(body)→全体の振り返りと主張のダメ押し(conclusion)という分かりやすい流れができています。
また、bodyを構成する2つの段落も、それぞれtopic > supportの流れで作られているので、これも結論ファーストの構成で分かりやすいですね。
おわりに
英語のまとまった文章を書く時には、言いたいことを分かりやすく伝えるための「構成」を慎重に検討する必要があります。実はこれはスピーキングでも同じです。エッセイを書く時に「論理的で筋の通った展開」を考える習慣を身につけておけば、英語を話すときにも「分かりやすい伝え方」ができるようになりますよ。
限られた試験時間の中で美しい構成の文章を書きあげることは簡単ではありません。訓練が必要です。自分一人でただ数をこなすための練習するのではなく、学校の先生や塾の先生など、話の流れ全体の論理性や内容の説得力を評価できる人からのフィードバックをもらいながら、「英語で伝える力」を磨いていきましょう。