英単語の勉強法について(2)

英語学習法

語彙学習の「質」について考えた前回の投稿に続き、今回は語彙学習の「量」について書いていきたいと思います。今回のキーワードは「小分けにして勉強すること」と「反復学習」です。

何単語覚えるか

基礎英語力についてまとめたこちらの記事で、「初級学習者は3000語」「難関国公立大学受験を考える人は5000-6000語」の習得を目指しましょうと書きました。(ちなみに、ここでは1つのword familyを1単語と数えているので、nation, nationalize, national, nationallyといった品詞が異なる同じ単語の仲間はまとめて「1単語」です。)

今自分が大体どのくらいの語彙力を持っているのかを知りたいという人は、インターネットで ”English Vocabulaty test” と検索すれば、無料でvocabulary sizeを予測してくれるアプリケーションを見つけることができます。

さて、目標の語彙力を手に入れるまでの過程ですが、語彙学習のやり方は色々ありますね。初学者の場合、英会話の練習や英語のリーディング素材など、「単語学習を主目的としない学習活動」の中で自然と語彙力が上がっていくことが多いと思います。ただ、ある程度基本的な英語を理解できるようになると、意識的に「より難しい英語の素材」を求めていかないと、「知らない単語に出会える素材」を使って勉強する頻度・語彙学習の効率が下がってしまいます。ですので、「超基本的な英語の語彙」がある程度身についた時点で、単語帳を用いた「語彙習得そのものを目的とする活動」を取り入れていくのが、計画的な語彙力向上には有用です。

単語帳、一日何単語ずつ覚える?(一夜漬けはええことないで、という話)

単語帳で勉強しましょう!となると、どのくらいのペースで勉強すればいいのかが気になりますね。これは個人差(得意・不得意、学習に確保できる時間などの個別の状況の違い)があるので、最適解をここで示すことはできません。ただ、私自身のこれまでの指導経験を振り返って言えることは、「一度に詰め込みすぎるな」ということです。

あなたは学生で、毎週100個の英単語の小テストを受けないといけないとします。部活や他の宿題で、いつもテスト直前に100個の単語を一夜漬けで叩き込み、何とか小テストを乗り切っています。

記号選択形式の小テストは何とか合格点を取れるかもしれません。でも、実際に100個の単語の語彙知識(発音、意味、使い方)がちゃんと「身についている」かというと、ほとんどできていないはずです。

第一、「1日で100個」というのが新規に処理する情報量として多すぎます。50個でも多いでしょう。一度に大量の単語に触れることで生じる障害として、単語同士の「干渉」というものが考えられます。これは、似た形(発音・スペル)の単語(例:accuseとexcuse, complicatedとcompatibleなど)の意味を混同して、どっちがどっちか分からなくなるような現象を指します。一度に触れる単語数が多ければ多いほど、同じような見た目で区別がややこしい単語のペアに出会う確率は高くなり、記憶の整理が困難になります。

第二の問題として、1日で50個も100個も覚えようとすると、「質の高い学習」をできなくなります。用例、語源や発音を丁寧に調べるなどする「深い学習」は、時間がかかるものです。こんなこと、100単語分も一気にやってられませんよね。一度に大量の単語を詰め込もうとすると、どうしても学習の中身が浅くなり、結果的に記憶への定着度が悪くなってしまいます。

そして何より、「一日で100個をまとめて学習する」というストラテジーでは、「復習」のフェーズが丸ごと抜け落ちてしまいます。繰り返し学習・反復学習の重要性について認識していないと、いつまでたっても「勉強したはずの単語が全然身につかない」という状況から抜け出すことはできません。

反復学習は、ほぼ絶対必要

未知語との1回きりの出会いでその語彙を習得してしまうことはほとんどありません(よほどインパクトを伴う出会いでない限り)。たいていの場合、ターゲットとなる語彙と複数回出会わないと、その知識は長期記憶として定着しません。ですので、語彙学習に復習はつきものです。それも複数回の復習が必要なのです。

反復学習にはコツがあります。それは、「復習と復習の期間を少しずつ広げること」です。spaced rehearsalとかspaced repetitionと言われるやり方です。

心理学の研究で、反復学習は少しずつ期間を広げて行うことが効果的であることが実証されています。ですので、語彙学習時も「最初に勉強した翌日、5日後、2週間後に同じ単語セットを復習する機会を設ける」などの計画を立て、「完全に忘れる前に記憶を呼び起こす・刺激する」のが望ましいです。ただ、厳密に「〇日後、△日後、□日後に絶対復習するぞ!」とルールを決めきってしまうと、継続が難しくなることもあります(忙しくて復習時間を確保できない日が出てくるなど)。1日あたりの新出語彙数・復習時間確保の負担感とのバランスを上手に取りながら、無理のないインプット量をこなせる計画を作ると良いです。例えば、学校の宿題で毎週100単語覚えないといけない学生さんも、次のように「必ず複数回の復習機会がある勉強計画」を実行すれば、無理がなく記憶定着率も良い勉強ができるでしょう。

Day 1: 新規No.1-No.25

Day 2: 新規No.26-50 復習No.1-25(1回目)

Day 3: 新規No.51-75 復習No.26-50(1回目)

Day 4: 復習No.1-25(2回目)、復習No.51-75(1回目)←復習だけの日を作る

Day 5: 新規No.76-100、復習No.26-50(2回目)

Day 6: 復習No.76-100(1回目)、復習No.51-75(2回目)

Day 7: 復習No.76-100(2回目)、全体の復習(3回目)←復習だけの日を作る

まとめ

語彙力を伸ばしたいときは、定量的な学習計画を立てやすい単語帳を活用するのがおすすめです。

その際、一度に数十個の単語を詰め込むのは記憶の定着率を下げてしまいます。小分けにして(15~30個程度)、繰り返し学習する計画を立てましょう。

反復学習のコツは「忘れそうな頃に思い出す」です。「初回学習日の1日後→5日後→14日後」など、少しずつ期間を広げて反復することで、長期的に保持できる知識にしていきましょう。

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